相続財産に土地や住宅・マンションといった不動産が含まれる場合、
その新所有者となった方は不動産の名義を変更しておく必要があります。
この相続登記は現在は義務ではありませんが、R5年頃に義務化される
予定です。
その不動産が旧名義人のままですと、売却できない等の不都合や
次に説明します第三者対抗問題も発生してくる可能性もありますので
早めに登記しておくことをおススメします。
この899条2の法律はかなり重要です。
従来は「相続させる旨の遺言」によって承継された相続財産については、第三者に先に登記されても取り戻すことが
出来ました。
しかしこの法律では、法定相続分を超えて承継した部分については、登記等の対抗要件を備えておかなければ、
取り戻すことは出来ないとされました。
例)
・相続財産 = 不動産(評価額)2000万 + 現金3000万
・相続人 = 妻A、子B
・遺言により次のように確定
妻A = 不動産2000万 + 現金1000万
子B = 現金1000万
法定相続割合は妻、子とも1/2ずつ。
子Bは借金があったため、妻Aが相続した不動産2000万のうち、子Bの法定相続分1000万分を売却し、貸主に返済してしまった。妻A名義への相続登記をしていなかった為、妻Aは貸主に対して自己の所有の権利を主張できない結果となってしまった。
この例のように第三者に先に登記されてしまったため、せっかく手に入れた財産を失う事になってしまいます。
相続が発生しましたらなるべく早く登記等の対抗要件を備えておくことをおススメします。
(参考)
(共同相続における権利の承継の対抗要件)第899条の2
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を
超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した
共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の
内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の 規定を適用する。
不動産登記法63条2項
相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
・被相続人の出生~死亡までの全ての戸籍謄本(除籍謄本)
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・委任状(代理申請の場合)
・登録免許税
・遺産分割協議書(分割協議で分割した場合)
・相続人の印鑑証明書
・登記申請書
相続税とは、親族などが死亡したことにより、
財産を譲り受けた者に対してかけられる税金のことをいいます。
相続税は全ての相続人に課税されるというものではありません。
相続や遺贈などによって被相続人から相続人が承継した財産の合計額が基礎
控除額の範囲内であるならば相続税は課税されません。
《基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) 》
・相続放棄した相続人・・・人数に数える
・代襲相続人がいる場合・・・人数に数える
・養子がいる(実子なし)・・・養子が3人以上いても2人で数える
・養子がいる(実子あり)・・・養子が何人いても1人と数える
亡くなった人の財産が基礎控除額以下の場合は相続税を払う必要はありません。
また、相続税の申告をする必要もありません。
相続税の計算は以下の3段階の計算を順に行うことにより算出することができます。
①相続財産の総額を計算
亡くなった人の土地や現預金、株式、生命保険金などの全ての財産を集計します。そこから葬儀費用や借入金などの費用を控除します。この遺産総額が上記で説明した相続税の基礎控除額を下回っていれば、相続税は0円となり、申告の必要性はありません。
遺産総額が基礎控除を超えてしまった方は②へ進みます。
《例》 配偶者+子2人の場合
1億円(遺産総額)-(3000万+600万×3(相続人人数))=5200万円(課税対象額)
②相続税の総額を計算
法定相続人が、法定相続分通りに取得したものとして各人の相続額を、計算して求めます。
《例》 課税対象額×法定相続割合
5200万円×50%=2600万円(配偶者分相続額)
5200万円×25%=1300万円(子A分相続額)
5200万円×25%=1300万円(子B分相続額)
下記の速算表に当てはめ相続税の総額を求める
2600万円×15%-50万円=340万円(配偶者分相続税額)
1300万円×15%-50万円=145万円(子A分相続税額)
1300万円×15%-50万円=145万円(子B分相続税額)
340万円+145万円+145万円=630万円(相続税総額)
③各相続人の相続税納付額を計算
相続税の総額を実際の財産取得割合に応じて各相続人が負担することになります。
《例》 1億円の遺産を 配偶者40% 子A35% 子B25%の割合で相続した場合
630万円×40%=252万円→配偶者分納税額(配偶者控除により実際の納税額は0円)
630万円×35%=220.5万円→子A分納税額
630万円×25%=157.5万円→子B分納税額
相続税の課税額 | 相続税の税率 | 相続税の控除額 |
~1000万円以下 | 10% | ― |
1000万円超~3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超~5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1700万円 |
2億円~3億円以下 | 45% | 2700万円 |
3億円~6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超~ | 55% | 7200万円 |
<贈与税額控除>
相続開始前3年以内の贈与財産は相続税の対象となります。そのため、生前贈与をした際に支払った贈与税を相続税から差し引いて、税金が2重にかからないようにするために設けられている控除です。
<配偶者控除>
配偶者は、法定相続分又は1億6,000万円以下の財産の取得であれば、相続税はかかりません。
<未成年者控除>
20才未満の法定相続人がいる場合は、相続税額から次の金額が控除されます。
10万円×(20歳-相続開始時の年齢)
<障害者控除>
障害者である法定相続人がいる場合は、相続税額から次の金額が控除されます。
10万円(特別障害者は20万円)×(70歳-相続開始時の年齢)]
<相次相続控除>
10年以内に2回以上の相続があり、2度目の相続の被相続人が1度目の相続で相続税を納付しているときは、
相続税額から一定の金額が控除されます。
<外国の財産に対する相続税額の控除>
相続財産の中に外国の財産があり、その財産について、その国で相続税又は贈与税に相当する税が課せられたときは、
相続税額から一定の金額が控除されます。
<贈与税額控除(相続時精算課税贈与税)>
相続時精算課税贈与税が課せられているときは、その税額は相続税額から控除します。
また、相続税額から控除しきれない贈与税額があれば、その税額は還付されます。
相続税の申告書を提出することが必要な人は、
原則として相続の開始があったことを知った日(被相続人が死去した日)
の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。
申告書は被相続人が死亡したときに住んでいた住所地を管轄する税務署に提出する必要があります。
相続税は、原則として相続の開始から10ヶ月以内に現金による一括払いが原則ですが、相続税を一括で支払うことができない場合に税務署長の許可を受ければ延納をすることが認められます。
以下の要件全てをクリアする必要があります。
①納付すべき相続税額が10万円を超えること
②納付期限までに又は納付すべき日までに、金銭で一時に納付することを困難とする事由があること
③必要額満たす担保を提供すること
④納期限又は納付すべき日までに、必要書類を添付して所轄税務署長に延納申請書を提出すること
物納とは、相続税を金銭以外の財産で納めることをいいます。
相続税は金銭による一括納付が原則であり、一時に納付することが困難な場合には延納によって納付しますが、
延納によっても支払うことが困難な事由がある場合には、納税者の申請によって相続財産による物納が認められています。
以下の要件全てをクリアする必要があります。
①延納によっても金銭納付が困難な事由があり、その納付を困難とする金額を限度とすること
②物納適格財産であり、定められた順位によっていること
③定められた期限までに所轄税務署長に物納申請書を提出すること
※『金銭による納付が困難な事由』があるどうかは、申請者が相続によってどのような財産を取得したのか、
また、申請者自身の資産の保有状況や収入の状況などを総合的に考慮して判断されます。
相続財産のうち、国内にある以下の財産は物納に充てることができます。
<優先順位>
第一順位・・・国債・地方債
第二順位・・・不動産・船舶
第三順位・・・社債・株式・貸付信託又は貸付信託の受益証券
第四順位・・・動産
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