第 ５ 回　【現金】 編

相続財産の分割の手順は簡略化すると

　Ａ「分割財産の確定」・Ｂ「相続人の確定」 → Ｃ「分割協議」 → Ｄ「名義変更」・Ｅ「現・預貯金分配」

というような順序で進めていきます。（ＡとＢ、ＤとＥは並行作業）

このシリーズの前半は、Ａ「分割財産の確定」にあたる
　「分割対象になる遺産」と「それ以外の遺産(受け取る人が特定される等)」
をとりあげます。

遺産を分割するには、一般的には下記の①と②を同一視し「①+②」と「③」の２種類に整理して
「分割財産の確定」を行うことで良いと思いますが、ここでは少し詳しく３つに分類して解説しておきます。

① 分割協議を必要とする遺産
② 分割協議をしなくても各相続人に、法定割合で固有の権利として属する遺産
③ 法定割合に関係ない、あるいは相続に該当しない、受け取る人が特定されている遺産

※①と②については問題が無ければ、実務上同じ分割協議をする財産としてリストアップし
　一括して分割したほうが便利な場合が多いです。
　①と②を区別する必要があるような状況になった場合は、専門家に相談する事をお勧めします。

今回の本題です。

現金は分割対象財産であり分割協議が整わないと分配できません。（①に該当）
したがって分割対象財産として現金が多額にあったとしても、分割協議が整わないうちに
その現金の管理者に対して、自己の共有持ち分割合の範囲内であっても分配を求めることはできません。
但し、相続人全員の同意がある場合は現金を先に分配する事も可能です。

また不動産等の分割でその不動産を一人だけが相続し、代わりに現金を支払うという代償分割を
行うような場合、相続人の間で現金のやりとりが発生しますのでその費用に充当する等の為にも
現金や預金の分割も他の財産と一括して分割したほうが便利な事もあります。

※この掲載記事は一般論、原則論で記載しています。
　 遺産分割の大前提は「公平性と一切の事情」です。
　 また相続人の合意があれば法律の規定に拘束されることなく自由な分割も可能です。
　 特殊なケースについてはお問い合わせください。