第１０回　【金銭・保障・連帯債務】 編

相続財産の分割の手順は簡略化すると

　Ａ「分割財産の確定」・Ｂ「相続人の確定」 → Ｃ「分割協議」 → Ｄ「名義変更」・Ｅ「現・預貯金分配」

というような順序で進めていきます。（ＡとＢ、ＤとＥは並行作業）

このシリーズの前半は、Ａ「分割財産の確定」にあたる
　「分割対象になる遺産」と「それ以外の遺産(受け取る人が特定される等)」
をとりあげます。

遺産を分割するには、一般的には下記の①と②を同一視し「①+②」と「③」の２種類に整理して
「分割財産の確定」を行うことで良いと思いますが、ここでは少し詳しく３つに分類して解説しておきます。

① 分割協議を必要とする遺産
② 分割協議をしなくても各相続人に、法定割合で固有の権利として属する遺産
③ 法定割合に関係ない、あるいは相続に該当しない、受け取る人が特定されている遺産

※①と②については問題が無ければ、実務上同じ分割協議をする財産としてリストアップし
　一括して分割したほうが便利な場合が多いです。
　①と②を区別する必要があるような状況になった場合は、専門家に相談する事をお勧めします。

今回の本題です。

いわゆる生前の金銭債務＝借金（マイナス財産）については
相続開始と同時に法定相続割合で各相続人が承継することになり、その割合分の支払い義務を
負う事になります。したがって分割協議を必要とする財産には該当しません。
分割協議を必要とする財産はプラスの財産に限ります。

保障や連帯債務についても同様に法定割合での保障、連帯保証を引き継ぐことになります。
但し死亡前に発生している債務については当然引き継ぎますが、死亡後に発生した債務も
引き継がなければならないかという点については、個々に検討を要します。

この義務はプラスの財産を相続しなかったとしても発生してしまいます。
これを避けるには家庭裁判所への相続放棄を申請することが必要になります。

また相続人の間での合意によって一人の相続人が全債務を承継するとの話し合いは相続人間では有効
となりますが、債権者が同意しない限り債権者は各相続人に法定割合で請求する権利を有し続けます。

※この掲載記事は一般論、原則論で記載しています。
　 遺産分割の大前提は「公平性と一切の事情」です。
　 また相続人の合意があれば法律の規定に拘束されることなく自由な分割も可能です。
　 特殊なケースについてはお問い合わせください。